心は平等じゃない!生まれつきネガティブな人の遺伝子と脳の仕組み

前回の記事では「ネガティブな性格の遺伝率は46%!」「心は平等じゃない」と性格にはかなりの割合で遺伝的な要因が関係しているということをお伝えしました。

私達の性格や人格には遺伝的な影響が強く認められており、その影響度は約50%=約半分。

そして、不安や傷つきやすさ、劣等感、抑うつ感、悲観的傾向というネガティブな性格に関連する「情緒不安定性」の遺伝率も46%とのことでしたね。こちらも約半分ということになります。

しかし、「ネガティブな性格は約半分も遺伝の影響が関わっている」と聞いても

「え?ホントに?」とピンとこない方も多いのではないかと思います。

ですので、今回はネガティブな性格の遺伝的要素(情緒不安定性の遺伝率46%)に関連すると思われる遺伝子や脳の働きについて紹介していきます。

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不安感・ストレス耐性を左右するセロトニントランスポーター遺伝子

ネガティブな性格に関係する遺伝的要素として、まず最初に紹介するのはセロトニントランスポーター遺伝子

 

このセロトニントランスポーター遺伝子は個人が感じる不安感やストレス耐性に関わっているといわれています。

 

少し難しい話になるかもしれませんが、メカニズムについてはざっくりと理解していただければ結構です。

 

セロトニンとは脳内で働く神経伝達物質です。セロトニンには様々な作用があり、まだわかっていないところも多いのですが、精神を安定させる脳内物質として広く知られています。セロトニンは個人が抱く不安感に深く関わっていると言われています。

 

※脳内の神経伝達物質とは簡単に言うと、脳内の情報のやり取りに使われている化学物質です。

 

セロトニントランスポーターはセロトニンを回収し再利用するための運搬役です。

 

このセロトニントランスポーターの数はその人の持つ遺伝子によって決まっており、その数を決定するのがセロトニントランスポーター遺伝子。

 

セロトニントランスポーターの数が違うと、脳内におけるセロトニンの働き具合に個人差が出てきます。そして、セロトニンの働き具合が異なると、その人が感じる不安感などに個人差が出てくるといわれています。

 

つまり、その人が持つセロトニントランスポーター遺伝子の型によって、人それぞれ脳内でのセロトニンの働き具合が異なり、その結果、その人が抱く不安感などに個人差が出てくるということです。

 

セロトニントランスポーターの遺伝子にはS型とL型の二種類があり、その組み合わせによって人はSS型、SL型、LL型の3タイプに分かれています。

 

SS型を持っている人は不安や不公平感を感じやすく、緊張しやすいといわれています。また、ストレスに強く反応するためストレスに弱い。

 

逆に、LL型を持っている人は不安を感じにくく、楽天的だといわれています。もちろんストレスにも強いタイプ。

 

SL型はその中間ですね。

 

セロトニントランスポーター遺伝子に関しては、うつ病との関連がよく指摘されていますが、「セロトニンとうつ病の関係を大きく見直すこととなる研究結果が発表される」という報告もあり、まだよく分かっていない部分も多いというのが現状です。

 

また、ひとつの遺伝子が性格に与える影響はわずかとも言われており、もちろんこの遺伝子だけで性格が決まるわけでもありません。

 

ですが、実際に調査してみるとやはり、SS型の人の方が不安感を抱きやすいという実験結果があります。

 

505人のサンプルで調べた研究によると(*1、前出したユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルクの研究者らによる論文)、SS型やSL型など、S型が入っている人はLL型に比べて不安を感じることが多いことがわかったそうです。セロトニンをあまり回収できない場合、過度に怖がったり不安を抱きやすくなる。

 

引用元:なぜ「お化け屋敷が怖い」のか遺伝子から考える

 

私達はもって生まれた遺伝子の型によって、感じる「不安感」に差が出てくる可能性があるということですね。

 

また、他にもSS型の人の方が強いストレス反応を示すという実験結果もあります。

 

筆者らは、セロトニン・トランスポーターの遺伝子多型によって、ストレスにさらされたときの脳と身体の反応の個人差が説明できるかを検討した。

日本人にはL/Lタイプの個人はきわめて少ないので、S/Sタイプとそれ以外(S/LタイプとL/Lタイプ)を比較した。

ストレス課題として連続した暗算課題を遂行させると、アドレナリンやノルアドレナリンといったストレスや感情に関係したホルモンの分泌が、明らかにS/Sタイプの個人において多かった。また、S/Sタイプの個人では、それらのホルモンの影響により、心拍の上昇もより大きかった

 

引用:『感情心理学・入門』 大平英樹(編) p50

 

ちなみにストレスや感情に関係したホルモンの分泌が多かった・心拍数の上昇が大きかったというのは、それだけストレスに強く反応していたということです。

 

反応が強いということはもちろん、ストレスの影響を受けやすい体質ということになります。

 

このことからいえるのは、私達は生まれながらに持った遺伝子の型によって、感じる「不安感」やストレスに対する反応の強さが変わってくる可能性があるということ。

 

 

逆境に強い人の秘訣!?脳内麻薬の働き方も遺伝子の影響を受けている

続いて、βエンドルフィンという神経伝達物質について。

 

私達の脳はストレスを感じるとβエンドルフィンなどの神経伝達物質を分泌し、ストレスに対抗しようとします。

 

神経伝達物質とは先ほども紹介しましたが、脳内の情報伝達に用いられる化学物質です。

 

βエンドルフィンは脳内麻薬ともよばれ、気分を高揚させる作用があり、また、幸福感をもたらしてくれます。

 

簡単いうと、気持ちをハイにさせてくれるということですね。

 

βエンドルフィンを含む神経伝達物質はそれを受けとる受容体と結びつくことで情報が伝達され、脳内に影響をおよぼします。

 

このβエンドルフィンを受け取る受容体の数はその人の持っている遺伝子によって異なっており、それによってβエンドルフィンがもたらす作用には個人差が出てくるといわれています。

 

βエンドルフィンを受け取る受容体が多い人はストレスがかかるほど強い幸せを感じることができます。

 

βエンドルフィンを受け取る受容体が多い」という遺伝子的な性質を持っていると、その人はストレスがかかるほど強い幸せを感じます。

脳内麻薬は、一度その出し方を覚えると、脳はその回路をつながりとして残すので、次からはさらに多くの脳内麻薬が出るようになります。

その人は、高いストレス環境化下に置かれていながら、逆にどんどん多幸感を感じてしまう脳をもっているということになるのです。

 

引用:『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』 著 長沼 毅

 

つまり、「生まれもったβエンドルフィンを受け取る受容体の数によって先天的にストレスに強い人がいる」ということが言えるのです。

 

そして、このβエンドルフィンを受け取る受容体の数は遺伝子によって決定されているので、単なる生まれつきです。

 

例えば私達が、「つらい」「もう嫌だ、逃げ出したい」と思うような時にも、「ワクワクする!」「逆に燃えてくるよね!」と非常にポジティブな気持ちを保てる人がいます。

 

そのような人を見ると、

 

「何でこの人はこんなに前向きに考えることができるんだろう?」「何か考え方に秘訣があるはずだ」

 

と考え、時には

 

「自分は何でこんなにも精神的に弱いんだろう…」「ネガティブにしか考えられない…。私の何が悪いんだろう」

 

と自己嫌悪におちいる事もあるかもしれません。

 

ですが、本当にその違いは考え方や気持ちの持ちようだけで決まっているのでしょうか?

 

あなたに何か問題があるわけでなく、単にその人はβエンドルフィンの恩恵を受けやすい体質なのかもしれません。

 

扁桃体の活性度も遺伝的な要因がある

不安や恐怖・怒りを生み出すといわれている脳部位、「扁桃体」の活性度にも遺伝的な要因があるといわれています。

不安や恐怖はこの扁桃体を中心に生み出されていると考えられています。

例えば、サルから扁桃体を削除すると本来怖がるはずのヘビを見ても逃げるどころか逆に食べようとします。

恐怖心が完全になくなってしまうのですね。

扁桃体が活性化しやすい人ほど不安や恐怖を感じやすい人ということになります。

この扁桃体の活性度は、上述のセロトニントランスポーター遺伝子の型の違い(厳密には5-HTTLPR)で個人差の10%を説明できるといわれています。

参考図書:「性格はどのようにして決まるのか 遺伝子、環境、エピジェネティックス」 p49 著 土屋廣幸

また、これとは別にセロトニンレセプターに関する遺伝子の違いも扁桃体の働きに違いをもたらします。

セロトニンレセプター1Aに関する遺伝子の型がGGの人では扁桃体の反応が低下し、不安感を抱きにくいとのことです。この遺伝子の多型は、不安に対する反応の9.2%を説明するとされています。

参考図書:「性格はどのようにして決まるのか 遺伝子、環境、エピジェネティックス」 p48 著 土屋廣幸

このことからも、生まれ持った遺伝子の型によって、不安を感じやすい人とそうでない人がいるということが言えそうですね。

※あまりに長くなるので詳しいメカニズムは割愛します

 

人間には持って生まれた気質がある

最後に紹介したいのが「気質」との関係性。

 

心理学の中には「気質論」という分野があります。気質論では人間にはもって生まれた気質というものが存在し、それは一生を通して変わることはないと考えられています。

 

気質とは簡単にいうと「もって生まれた性格」。そして、それは生涯変わることはない。ということですね。

 

この「気質」については様々な説があり、「これが人間の気質です!」と定まったものはまだありません。

 

ですが、その中でも「不安」に関する項目は多く見られ、不安の感じやすさを生まれつきの気質としているケースも多く見られます。

 

アメリカの精神科医、クロニンジャーは不安傾向に関連する損害回避を気質としています。

 

この損害回避傾向が強いほど、心配性、内気、悲観的、用心深い、怖がりといったネガティブ傾向に結びつきます。

 

また、「生まれつき性格(=気質)」をベースにカウンセリングを行っている心理カウンセラーの竹内成彦さんも「怖がりか」「怖がりでないか」は生まれつきの気質だとおっしゃってます。

 

生まれつき「不安気質」が強い人は、他の人に比べてどうしても不安を感じやすい、悲観的に物事を捉えやすい、落ち込みやすいなどネガティブな感情に悩まされることが多いです。

 

気質の観点からもネガティブ傾向には先天性があるということができるのですね。

遺伝的な要因は様々

ここまで、いくつかの例を通してネガティブな性格の遺伝的な要因を紹介してきました。

 

念のため断っておきますが、性格というものは様々な要因を元に形成されており、単体の遺伝子などで性格を説明することはできません。

 

単純に「○○遺伝子をもっている→○○な性格」と断定することはできないということです。

 

ですが、性格形成に遺伝的な要因も深く関わっていることは明らかです。

 

ここであげたような例を含むいくつもの要素が重なることによって、情緒不安定性の遺伝率「46%」というネガティブ性格の遺伝的要素を作り上げていると私は考えています。

 

また、この情緒不安定性の遺伝率は、1992年~1997年の間に行われた計6回の研究の結果でも「41%、49%、41%、42%、58%、52%」と一貫して40%~50%の間に収まっています。(参考図書「性格のパワー」 著 村上宣寛)

 

約20年前から一貫して変わらないということで、これは人間の本質的な部分であり、今後も変わることはないのかもしれません。

 

まずは遺伝的要因を受け入れることが大切

さて、これまでネガティブな性格の遺伝的影響を様々な角度から紹介してきました。

 

ですが、ネガティブな性格で悩んでいる方がこのような遺伝の話を聞くと

 

「そんなことは聞きたくない!それじゃ私の人生はこれからもお先真っ暗だ!そんなのは認めたくない!」

 

と耳をふさごうとする方もいらっしゃると思います。

 

ですが、勘違いしていただきたくないのは、何も私は「性格はすべて遺伝で決まっている。性格に遺伝の影響がある限り人が変わることは不可能だ」といいたいわけではありません。

 

むしろ逆です。人間は変われます。

 

脳には可塑性が認められており、脳は変化することがわかっています。また、エピジェネティクスといって遺伝子レベルで身体が変わることも確認されています。

 

ですが、「今の自分を変えたい!」という性格改善において遺伝の影響、性格の先天性を無視してもいいということではありません。

 

よくよく考えると当然なことなのですが、私達は確かにみんな同じ脳をもっています。

 

ですが、同じ胃や腸をもっていても、各々によって消化吸収能力に差があり、生まれつきおなかを下しやすい人、生まれつきおなかが強い人もいます。

 

また、中には酵素が働かないために特定の食品を食べるとおなかを壊したりする人もいたりと、その働き方は人によって様々です。

 

それと同じで、同じ脳を持っているといっても、脳の構造や働き方には元々個人差があります。(神経伝達物質を回収するトランスポーター、神経伝達物質を受け取る受容体の構造、扁桃体の活性度など)

 

それによって考え方やものの見方、性格に違いが出てくるのも当然のことです。

 

その結果、元々不安や悩みを抱きにくい楽観的な人もいれば、ストレスの影響を強く受け、悩みや不安を強く感じるネガティブな人=ネガティブ気質な人も出てきます。

 

前回もお話しましたが、心って平等じゃないんです。

 

そして私の経験上、この先天性を無視した性格改善はほとんど意味をなしません。

 

例えば、すごく不安が強い心配性な人が楽天家の人を見ると

 

「やっぱり考えすぎるのはよくないよね。よし、私も気にしないようにしよう!」

 

と、自分も不安に思うことをやめようと努力なされると思います。

 

ですが、ほとんどのケースでこのような精神的な努力は実を結ばないのではないでしょうか?

 

結局、気にせずにはいられないことに悩み、中には「なんで自分は不安が頭から離れないんだろう……」と自己嫌悪に陥る方もいるかもしれません。

 

ですが、先ほどの遺伝の話を思い出してください。個人が感じる不安感には元々個人差があります。つまり、元々楽天的な人は、そもそも論、不安や恐怖を体質的にほとんど感じていない可能性もあるんです。

 

それを、不安や恐怖を感じやすいネガティブ気質な人が真似しようとすることに無理があります。

 

大切なのは先天性も加味した上で何ができるのか、そして、どのように自分と向き合っていくかです。

 

この先天性の知識を踏まえて、次の記事では、「なぜ性格の遺伝要素=先天性を受け入れることが大切なのか」について詳しく解説していきます。

まとめ

・その人の持つセロトニントランスポーターやβエンドルフィンの受容体の構造などには生まれつき各々違いがあり、それによって不安の感じ方、ストレス耐性などに違いがでてくる

・不安や恐怖を生み出す「扁桃体」の活性度も遺伝的な要因があると考えられている

・気質論において不安傾向を気質と定める者も多い。この気質はもって生まれたもので生涯変わらないとされている

・性格改善において、遺伝の影響を無視することはできない。遺伝の影響を受け入れて、その上で何ができるのかを考える必要がある

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