前頭前野を失った人は性格が一変する。前頭前野の機能と働きについて解説します

前回の記事では、頭が不安でいっぱいという心配性・不安症な人ほど、恐怖を認識する能力が高く、扁桃体という脳部位の働きが過敏で強いということをお話しました。

今回は恐怖を生み出すといわれる扁桃体の活動を制御する「前頭前野」について解説していこうと思います。

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前頭前野とは?前頭前野の場所とその特徴

まずは前頭前野について詳しく紹介していきます。

以前書いたおさらいになりますが、脳は3重構造になっており、下層=脳幹、中間層=大脳辺縁系、表面=大脳皮質と分類されます。

(脳の三重構造について知りたい方はこちらの記事をどうぞ)

表面層の大脳皮質は更に「前頭葉」「側頭葉」「頭頂葉」「後頭葉」に分けられます。

その前頭葉の中でも、最も前のほうに位置する部分を前頭前野と呼びます。

簡単に言うと、「前頭前野の場所はちょうどおでこのうしろあたり」というとわかりやすいでしょうか。

前頭前野は人間など進化した動物ほど発達しており、大脳皮質における前頭前野の割合は、

人間で30%。チンパンジーで17%。イヌで7%。ネコで4%。

ヒトが人であり、他の動物と違うのは、この大きな前頭前野を持っているためともいわれており、ヒト特有の高度な思考や感情などはすべて前頭前野の働きであるといわれています。

そのため、前頭前野は「脳の中の脳」とも呼ばれ、「脳の最高中枢機関」であると考えられています。

前頭前野は知性や理性、創造性を担っており、脳の中で感情のコントロールを担当しているといわれているのもこの部分。

「感情の脳」ともよばれる大脳辺縁系(扁桃体も含む)を中心に形成された様々な感情を、前頭前野がコントロールしているということになります。

前頭前野を損傷すると性格が一変する。前頭前野を損傷した人の例。

前頭前野の働きについて注目されるようになった有名な症例を紹介します。

※主な参考図書

「脳の疲れ」がとれる生活術  有田秀穂 著

「もの忘れ外来」のボケない技術(テク) 奥村 歩 著

時は二十世紀末の1994年、フィネアス・ゲージというアメリカ人の症例報告です。

ゲージは鉄道建設作業の現場監督で当時25歳。

勤勉で責任感が強く、周りとの人間関係も良好、上司からの信頼も厚かったので、若くして多くの作業員を取り仕切る現場監督の役割を任されていました。

1848年4月。そんな彼が悲劇的な事故に見舞われました。

爆破作業中に仕掛けたダイナマイトが爆発しないので、鉄棒でつついたところ、その瞬間にダイナマイトが爆発し、長さ約1メートルのその鉄棒が彼の下顎から頭を貫通してしまったのです。

このような大事故にも関わらず、彼は奇跡的に一命を取りとめ、一見すると、頭に鉄の棒が貫通している以外は何の障害もないかのように見えました。

運動障害、記憶障害、言語障害などもみられません。

しかし、ゲージには事故前と大きく変わっているところがありました。

それはゲージの「性格」

穏やかで有能な現場監督として周りの人間からも慕われていたはずのゲージでしたが、事故後の彼は

・監督としての意欲を失い、優柔不断で将来の行動計画を立てることができない

・自制心がなく、気まぐれで怒りっぽい。感情的である

・人前で不謹慎・卑猥なことを平気で言って述べる

などの変化が見られ、知人や友人には「もはやゲージではない」といわれるほど、彼の性格・人格は一変していました。

そのため現場監督の仕事は続けることができなくなり、仕事を変えました。

その後は、結局職も失い、各地を放浪。てんかん発作がひどくなるなど、健康状態も悪化し、事故の12年後にゲージは亡くなってしまいました。

ゲージの死亡後の1994年。アメリカのアイオワ大学にて、保管されていたゲージの頭蓋骨を元にコンピューターを使って損傷した脳部位を推定しました。

その結果、損傷場所は前頭前野(前頭眼窩回と前頭葉の先端部)であることがわかりました。

このような事例から、人間の個性や性格、意識や心と前頭前野との関連性が注目されるようになりました。

ちなみにゲージの例ではありませんが、前頭前野を損傷しても、話す、食べる、歩くといった基本的な人間の活動は障害されないことも分かっています。

前頭前野の主な機能。前頭前野には感情をコントロールする働きがある

続いて前頭前野の主な機能について紹介します。

1、人の気持ちを推測する

…私達は、相手の表情、声のトーンなどを頼りに相手の気持ちを推測することができますね。この人は今怒っている、この人は今悲しんでいる、この人は今喜んでいる…このように人の気持ちを推測できるのは前頭前野の働きによるものです

2、やる気を生み出す

「よし、頑張ろう!」「やってやるぞ!」といった、何かをやろうという「やる気」も前頭前野から生まれています

3、行動を制御する

…人の物を盗んではいけない、人に暴力をふるっていはいけない。私達が「やってはいけないこと」をしっかりと制御できるのも前頭前野の働きです。

4、感情を制御する

…前頭前野には行動の他にも感情を制御する働きがあります。嫌なことがあって内心は凄くイライラしてるけれど、同僚や上司の前では顔や態度に出さずに淡々と仕事をこなす。不安や恐怖を感じていても冷静に振舞う。このような感情の制御は前頭前野の働きによるもの。

ちなみに前頭前野は他の脳部位に比べ遅れて発達するという特徴があり、

・子供が大人に比べ我慢に弱く、感情を爆発させやすい

・思春期の若者がなかなか自分をコントロールできずにキレてしまう

といったことは前頭前野がまだ未発達であるということが原因のひとつではないかと考えられています。このように行動や感情を制御する働きがあるため、前頭前野は「抑制の脳」とも呼ばれています。

他にも、考える、創造する(アイデアを閃く)、記憶する、集中する…

などの人間にしかできない高度な働きを前頭前野は担当しています。これらの働きを見ていると前頭前野が脳の最高中枢であり、「脳の中の脳」といわれるのも納得できますね。

終わりに

以上が前頭前野の特徴と主な働きになります。どれも私達が社会生活を営んでいくうえで必要となる大切な能力ばかりですね。

前頭前野を損傷したゲージが社会生活をおくれなくなってしまったしまったのも、前頭前野の損傷によりこれらの能力が失われてしまったことが原因だと推測できます。

さて、前回の記事で紹介しましたが、不安や恐怖が人一倍強いといった心配性・不安症の人は、普通の人と比べて恐怖を認識する能力が高く、大脳辺縁系に属する「扁桃体」の活動が過敏で強いことが分かっています。扁桃体は不安や恐怖を生み出す脳部位でしたね。

その扁桃体が生み出す不安や恐怖といった感情を抑制する働きがあるのが今回紹介した「前頭前野」。

しかし、実験の結果、心配性・不安症な人ほどこの前頭前野の働きが鈍いということが分かっています。

次回の記事ではその実験を紹介し、更に、前頭前野を鍛え感情をコントロールする技術を紹介していきたいと思います。

まとめ

・前頭前野は前頭葉の前方に位置する部分。おでこのちょうど後ろあたり

・前頭前野は人間など進化した動物ほど発達しており、ヒト特有の高度な思考や感情などはすべて前頭前野の働きと考えられている

・前頭前野を損傷すると性格・人格が一変してしまう。仕事への意欲を失う、行動計画を立てられなくなる、自制心を失うなど社会生活を営む上で大切となる様々な能力が失われる

・前頭前野の主な働き

…「人の気持ちを推測する」、「やる気を生み出す」、「行動を制御する」、「感情を制御する」

他にも、考える、創造する(アイデアを閃く)、記憶する、集中するなど、人間にしかできない高度な働きを前頭前野は担当している

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