扁桃体を鎮めると同時に前頭前野を活性化する方法。呼吸法で心が落ち着く理由を具体的に解説します


よく呼吸法を行うと「心が落ち着く」「精神的に安定する」ということを聞きますね。

ヨガや坐禅も呼吸を整えることを重要視していますし、プロスポーツ選手もメンタルコントロールの一貫として呼吸法を取り入れていることも多いです。

このブログでも私がメンタルコントロール法の中核としてオススメしているのが「呼吸法」。

今回の記事では、呼吸法が心に効くメカニズムを説明していきたいと思います。

スポンサーリンク
記事内広告

心配性な人は前頭前野の働きが鈍い

これまで4回を通して、恐怖を感じやすい、常に不安がグルグル頭の中を回っている、という不安が人一倍強い人の脳の特徴をお伝えしてきました。

おさらいになりますが、私達の感情は「感情の脳」と呼ばれる大脳辺縁系からうまれており(特に扁桃体は怒り、恐怖・不安を生み出す中心と考えられている)、その感情を制御しているのが「制御の脳」と呼ばれている前頭前野。

以前の記事で紹介しましたが、不安や恐怖が人一倍強いといった心配性・不安症の人は、普通の人と比べて恐怖を認識する能力が高く、扁桃体の活動が過敏で強いことが分かっています。

それに加え、日常的に不安を感じることが多い人ほど前頭前野の働きが弱いということも分かっています。

ソニア・ビショップと認知脳科学化の同僚もまた、扁桃体の活動をどれだけ抑制できるかには不安度が関連していることを、実験によって突き止めた。

fMRIを用いて調べた結果、特性不安度の高い人は前頭前野にある抑制エリアを、不安度の低い人ほど効果的かつスピーディーに活動させられないことが分かった。

引用元 「脳科学は人格を変えられるか?」 著 エレーヌ・フォックス p176

特性不安度とは日常的な不安の感じやすさでしたね。

つまり、不安度が高い心配性・不安症の人は、扁桃体が普通の人より過敏に強く働くだけでなく、その反応を抑える働きのある「前頭前野」の働きが鈍いという二重のハンデを抱えていることになります。

不安気質を抑えるには、扁桃体の活動を鎮め、前頭前野の働きを活性化させればよい

さて、ようやく不安を感じることが多い・人一倍不安を強く感じるという心配性な性格=不安気質の原因が明確に見えてきましたね。

不安気質な人は脳の中の「扁桃体」という場所の働きが過敏で強く、また、それを制御する「前頭前野」の働きが鈍いということ。

ここまで分かると、不安気質に対して正しいアプローチを取ることができます。

不安気質を抑えるためには、「扁桃体」の活動を鎮めて、「前頭前野」の活動を活性化させればいいということ。

扁桃体を鎮め、前頭前野を活性化させる方法

それでは、不安気質を抑える「感情のコントロール法」を紹介していきます。

先ほどもお話したように、暴走する不安や恐怖といった感情をコントロールするには「扁桃体の活動を鎮め、前頭前野の活動を活性化させる」ということが大切になってきます。

この二つの条件を同時に満たしてくれるのが「呼吸法」

よく、「緊張しているときは、深呼吸すると心が落ち着く」と聞きますね。

また、心理療法などに呼吸法が使われることも多く、呼吸は私達の心に働きかける手段のひとつとして一般的にも認知されています。

いわば、呼吸には私達の心の状態を変化させる力があるということになりますが、それもそのはず。

呼吸法を行うことによって、扁桃体の活動が鎮まり、前頭前野の活動を活性化することができるのです。

呼吸法で扁桃体が鎮まる

扁桃体の活動と呼吸には密接な関わりがあります。

脳外科手術の際、扁桃体を微弱な電流で刺激すると呼吸数が増加することが確認されています。

また、扁桃体の脳波を調べてみた結果、呼吸とぴったりと一致していることが明らかになっています。

さらに、呼吸を自らの意思でコントロールし、ゆったりとした呼吸を行うと扁桃体の脳波が鎮まって不安が和らぐことも分かっています。

扁桃体と呼吸に関する実験を2つ紹介します。

まず紹介するのは扁桃体の活動と呼吸の関係性に関する実験。

呼吸に関する研究を長年続けている医学博士の本間生夫氏の行った実験によると、「不安」という感情と呼吸数の変化には綺麗な相関関係があり、また、呼吸の変化に同期して扁桃体も活動していたことが分かっています。

本間氏は実験で「予期不安」が生じている間の被験者の呼吸の変化と脳波の変化を観察しました。

参考図書 

「呼吸を変えるだけで健康になる 5分間シクソトロピーストレッチのすすめ」 著 本間生夫

実験のはじめに、被験者の指に電気ショック用の電極を取り付け、「2分以内に電流が流れる」と伝えます。実際に電流を流す必要はないのですが、このようなことを聞くと被験者は「いつ電流が流れるのだろう」と不安になります。この感情を「予期不安」といいます。

予期不安にかられている間の被験者の状態を観察したところ、被験者が不安に駆られている間、呼吸数が増加していることが確認されました。そして最も重要なこととして、呼吸数の増加に同期して、扁桃体も活動していたことが分かりました。

つまり、扁桃体の活動と呼吸のリズムは一致しているのです。

ですので、意識的に呼吸を整えることで扁桃体の活動を鎮めることもできます。

「NHKガッテン! 健康プレミアム vol.14 」に掲載されている実験を紹介します。

参考図書

NHKガッテン! 健康プレミアム vol.14

同書によると、被験者に「これから2分以内に電気ショックが与えられます」と伝えると脳波が大きく乱れ、呼吸も倍以上に速くなったとのことです。これは先ほど紹介した予期不安に対する反応と同じですね。

また、そのときの脳を状態を見てみると、扁桃体が活発に反応していました。

ですが、そこで意識して自分のペースで、ゆっくりと大きく息をすって吐く腹式呼吸を行ってもらったところ、脳波も呼吸数も元の状態にもどり、扁桃体の活動も鎮まっていることがわかりました。

同書に掲載されているメカニズムを引用で紹介します。

この扁桃体をリラックスさせるには、扁桃体のほぼ隣に位置し、扁桃体と密接にかかわり合っている呼吸中枢を利用します。

ゆっくり呼吸をすると、それを脳の扁桃体が感知して「ストレスがない」と判断し、副交感神経に切り替えるように指令を出します。そして、扁桃体からの緊張がほぐれ、不眠やストレスの緩和につながるのです。

NHKガッテン! 健康プレミアム vol.14 

副交感神経は自律神経の1つで、副交感神経が優位に働くと、心拍や血圧がゆっくりと下降し、また、全身の血流もよくなり身体がリラックスします。

つまり、不安を感じたときには、まずは呼吸を落ち着ける。それによって不安や恐怖を生み出す扁桃体の活動が鎮まり、副交感神経の働きも高まる。その結果、心も落ち着くということですね。

呼吸法で前頭前野が活性化する

また、呼吸法を行うと、脳の中の感情をコントロールする部分である「前頭前野」が活性化します。

私達が行っている呼吸は「生きるための呼吸」、「情動呼吸」、「意志による呼吸」にわけられます。

「生きるための呼吸」は普段無意識に行っている呼吸、「情動呼吸」は感情の変化に伴う呼吸、「意志による呼吸」は呼吸を意識的にコントロールする際の呼吸になります。

呼吸法における呼吸は3つのうち「意志による呼吸」に分類されます。

「意志による呼吸は」大脳皮質によって作られているため、意識的に呼吸をコントロールすることで大脳皮質に働きかけることができます。

大脳皮質には脳の最高中枢とも呼ばれる前頭前野が存在し、人間の「理性」を司る部分でしたね。

呼吸法を行うと前頭前野が活性化されていることが実験でも確認されています。

『自律神経を整える「長生き呼吸」 著 坂田隆夫』によると、

実際に呼吸法(ゆっくり長く吐く呼吸)をしている被験者の脳波を調べてみたところ、脳で感情をコントロールしている前頭前野が反応していることがわかりました。

また、前頭前野の脳波の記録をみてみると、「リラックス時にでる脳波」であるアルファ波が出ていました。

アルファ波は長い呼吸を始めるとすぐに増加し始め、普通の呼吸に戻った後も、半閉眼で安静にしている間は、30分維持されたとのことです。

また、スタンフォード大学のケリー・マクゴニガル教授も同様のことをおっしゃっています。

意識的に呼吸をゆっくりさせると、体をリラックスさせる働きをつかさどる「副交感神経」が活発になり、結果的に自律神経のバランスが調整されるのです。

そして、副交感神経が活発になると、脳の「前頭前皮質」がはっきりと活性化されることが分かっています。

引用元 『「呼吸法」で体と心が劇的に変わる』 マキノ出版 p8

前頭前皮質は前頭前野のことです。

呼吸法を行うことで、感情をコントロールする働きのある前頭前野を活性化できるのですね。

「不安がグルグル回り続ける、イライラが止まらない」となかなか感情をコントロールすることができない人ほど前頭前野の働きが弱っている可能性があります。

意識的にゆっくり呼吸を行う呼吸法で、しっかりと前頭前野を活性化させましょう。

呼吸法で前頭前野を活性化できれば、徐々に強すぎて暴走する不安をうまく制御できるようになっていきます。

生まれつき不安感が強い人は「感情のコントロール法」を会得する必要がある

最後に個人の感じる不安感や恐怖感の個人差に対する遺伝の影響を少しお伝えしたいと思います。

私達が感じる不安感や恐怖感、それに対する反応には個人差があり、その差異は遺伝子の構成と、その後に経験した様々な出来事によってもたらされるといわれています。

性格は人によって様々で、人一倍不安や恐怖を感じやすい心配性・不安症といった不安気質の方もいれば、精神的に動じることが少ない楽天的なタイプの人もいますね。

私達の性格や人格は遺伝(先天要素)と環境(後天要素)の両方が作用しあって形成されています。

しかし、このブログでは以前紹介ましたが、性格形成における遺伝の影響度を知らない人がとても多いのではないかと思います。

皆さんは性格形成における一番大きな要因をご存知でしょうか?

性格形成における一番大きな影響は遺伝です。

性格形成に影響を与える要因は

遺伝=50%、非共有環境(友人、教師、病気など)=30%-35%、共有環境(母親との関係など)=5%-10%、残り=誤差

となっています。

※参考図書 Newton (別冊) 「心はどこにあるのか」 脳と心 p99

つまり、私達の人格・性格は、思っている以上に遺伝の影響を強く受けているということ。

特に私達が感じる「不安」には個人差があります。不安感が人一倍強く、凄く怖がりな性格だという方は、元々もってうまれた体質として不安を感じやすい「不安気質」である可能性があります。

(心理学には気質論という分野があります。気質とはもって生まれた性格のことを指し、生涯を通して変わることがないといわれています。その気質によくあげられるのが「不安傾向」です

ですので、生まれつき不安が強い、恐怖を感じやすいといった不安気質な人は、不安や恐怖を意図的に鎮める「感情のコントロール法」を会得する必要があります。

「感情のコントロール法」の中で、私の実践経験上、最も効果がありオススメできるのは「呼吸法」。

自分は人一倍不安感や恐怖感が強い不安気質な性格だなと思う方は、少しずつでいいので呼吸法を実践し、習慣にしていくことをオススメします。

また、生まれつき不安気質な方でも、呼吸法を実践すればしっかりと不安をコントロールできるようになります。その点についてはご安心ください(^ω^)

※ちなみに私は、呼吸法で約10年近く飲み続けていた「抗不安薬(不安を和らげる薬)」を完全に卒業しました。不安には呼吸法です!!

呼吸法に興味のある方はこちらの呼吸法まとめ記事をどうぞ

まとめ

・心配性・不安症の人は前頭前野の働きが弱っている。

・心配性・不安症の人は、扁桃体が普通の人より過敏に強く働くだけでなく、その反応を抑える働きのある「前頭前野」の働きが鈍いという二重のハンデを抱えている

・不安気質を抑え感情をコントロールするためには、扁桃体の活動を鎮めて、前頭前野の働きを活性化させればよい

・呼吸法を行うと、扁桃体の活動が鎮まり、前頭前野が活性化される。また、副交感神経の働きも高まり、リラックス時に出る脳波・アルファ波も計測された。

・人の性格は遺伝の影響を強く受けている。自分は元々不安が強い「不安気質」だなと思う方は呼吸法を習慣化しましょう

スポンサーリンク
記事内広告
記事内広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連記事