不安が暴走するメカニズム

今回は不安が不安を生み出すメカニズムについてお話ししていきます。

不安障害の方を対象に書いた記事ですが、一般的な不安対策としても使える内容になっております。「病気じゃないけど不安が尋常じゃなく強い!」という方も是非ご覧になってください。

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前回のおさらい

前回の記事では不安障害を克服した人が語る共通点として「不安と戦わなければ不安は軽減される」ということをお話ししました。

私自身も回復へのターニングポイントとなったのが不安障害を受け入れ、必死になって不安と戦うのをやめたときです。

今回の記事ではなぜ不安と戦うのをやめると不安が軽減されるのかを解説していきます。

不安障害の人がはまる不安のループ

「不安とは戦わない」を理解するにおいてまず紹介したいのが不安障害の人がはまりがちな不安のループ。

これまでいくつかの記事を通して感情の乱れが自律神経やホルモンの乱れを通じて体に影響を及ぼすことをお伝えしてきました。

例えば怒りや不安といった感情は体を緊張・興奮状態に導く交感神経を働かせます。また、体に影響を与えるホルモンとしてはアドレナリンが分泌されます。

交感神経の働きが過剰になると引き起こされる体の変化には以下のようなものがあります。

・息切れ

・動悸

・イライラ、筋肉の凝りや痛み。頭痛や不眠など

不安障害の方は体に変調を感じる方が多いと思いますが、動悸、呼吸困難など非常に似通っている部分が多いと感じるのではないでしょうか。

それもそのはず。「完全版 不安のメカニズム」の著者・クレアウィークス先生によると不安障害で起こる様々な体の変調のほとんどはこのアドレナリン分泌によって引き起こされているとのことです。

また、不安障害の多くの人が体の変調を気にする余り自ら症状を悪化させる悪循環にはまってしまいます。

例えばすごくストレスがたまっているとき、ストレスが許容できるピークを越えてしまったときに動悸や呼吸困難といった症状が出てくることがあります。(もっとひどいときはパニック発作を起こすことも)

これは上記で説明したとおり、交感神経が過度に興奮し、アドレナリンが過剰分泌されたことが原因です。

ですが、動悸や呼吸困難といった体の変調を感じると私たちの多くは驚き動揺してしまいます。

「何だ!?一体何が起こってるんだ?もしかして心臓の病気か?」

自分の体のどこかが悪いのではないかと心配になり、不安な感情に包まれます。

一日中体の変調を細かく観察したり、中には病院を何件も周り体に異常がないか調べてもらう人も多いそうです(でも異常はみつからない)

しかし、皮肉なことに体のことを心配し、不安や恐怖が膨らめば膨らむほど更に症状は強くなります。

※不安や恐怖が強まると更に交感神経優位になり、アドレナリン分泌によって症状が強まる

「体がどこかおかしくなっているのではないか?これからも次々と恐ろしい症状が出てくるんだろうか?」

医者にどこも悪くないと言われても不安や恐怖で強まった症状をみると確信が強まってしまいます。

「やっぱりどこかおかしいんだ!」

そして確信に至った不安や恐怖の感情によってアドレナリンが分泌され更に症状が強まり長引いてしまいます。

これをクレア・ウィークス先生は「恐怖→アドレナリン→恐怖→アドレナリン」の悪循環と呼んでいます。

体の変調に驚き不安や恐怖を感じる→不安や恐怖でアドレナリン分泌が促進される→体の変調が強まる→症状がひどくなったことで不安や恐怖も強まる→アドレナリン分泌が促進される→体の変調が強まる・・・

まさに悪循環ですね。

この悪循環を断ち切るには不安・恐怖が更なる恐怖を生み出していることに気づき、不安や恐怖を無理に押さえつけようとしたり拒絶するのをやめるという方法が有効です。

※不安や恐怖を拒絶して身構える→緊張状態に陥り、更にアドレナリンの分泌を促す

これは比較的単純な神経症患者が陥るパターンではありますが、不安が不安を生み出すという不安のループにはまってしまうメカニズムとして非常に参考になります。

森田療法でも不安を無理やり打ち消すのはNG。

日本が世界に誇る神経症の治療法「森田療法」でも不安を無理に打ち消すことをやめるよう推奨しています。(森田療法では不安がありながらも自分が望んでいる行動をとるように促す)

森田療法には感情の法則というものがあります。

~感情の法則~

1、放っておけば消えていく

2,衝動を満たせば、消失する

3,慣れることで和らぐ

4,注意を向けると強くなる

5,体験が豊かな感情を育む

この中で今記事の内容と特に関わり深いのが1と4ですね。

4、『感情は注意を向けると強くなる』・・・不安などの不快な感情を微細に観察したり、無理に消し去ろうと躍起になると不快な感情に更に注意が向けられ逆に強まってしまいます。

不安を無視しようとしたり無理やり消し去ろうとすると逆に不安が頭から離れなくなるというのは皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか。これは後述しますが、最近の認知行動療法でも不安を抑圧せずに受け入れていこうという姿勢が取り入れられています。

1、『感情は放っておけば消えていく』・・・どんなに激しい感情でも、放っておけば次第に落ち着き、消えていきます。すごく喜ばしいことがあっても強い幸せ感がずっとは続かないように、どんなに悲しい思いや不安感を抱いても時間とともに落ち着いていきます。

不安障害の方がこれを聞くと「いや、私の不安はずっと消えません!」と考えると思いますが、その疑問に対する森田療法の答えは「感情の法則に反した扱いをしているから」とのこと。

不快な感情を消そうと躍起になったり、不快な感情にとらわれ回避行動を続けることが感情が収まらずに長引いてしまう原因となってしまいます。

※私は特に森田療法を推奨しているわけではないのですが、不安などの不快な感情を無理矢理消し去ろうとしないというスタンスはすごく共感できます。

認知行動療法でも不安を認めようという流れ

最近の認知行動療法においても同様の流れが見られます。不安や憂鬱感といったネガティブな感情を無理矢理消し去ろうとすると、逆に不安や憂鬱感が暴発してしまうのでそれをいったん受け入れましょう(=受容)という考えを取り入れたACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)が第三世代の認知行動療法として広がっています。

これは近年の心理学で言われていることなのですが、例えネガティブな感情であろうと無理に押さえつけるのはNGで、一旦受け入れること(=受容)が大切だとされています。

ネガティブな感情を強引に押さえつけようとすると次のようなメカニズムで逆に精神状態が悪化します。

不安やイライラなどのネガティブな感情を無理に打ち消そうとしたり無視しようとする→逆にネガティブな感情に意識が向かう→意識が向かったことによってネガティブな感情が必要以上に誇張される!

クレア・ウィークス先生の解説や森田療法と基本的な考え方は同じですね。

日常の生活でも、

・緊張しているときに緊張しないようにしようと思うと更にガチガチになる

・眠れないときに寝ようとすればするほど更に寝付けなくなってしまう

という経験もこの考えに通じるのではないかと思います。

最近の心理学や認知行動療法の観点からも不安を無理矢理抑えつける方法はNGということですね。

※第三世代の認知行動療法とは最新の理論に基づく従来より優れた認知行動療法という位置づけではなく、新しい視点を取り入れた認知行動療法のことです。

克服者も語る。不安と戦うのはやめましょう。

これは前回紹介した内容になりますが、克服者の話としても「不安神経症・パニック障害が昨日より少し良くなる本 著 ポール・デイヴィッド」という本は一冊まるまる不安とは戦わないことの重要性を説いた本ですし、パニック障害を克服したカウンセラーの弥永英晃さんもパニック障害と戦うのをやめたのがパニックを克服できた要因のひとつという記述をされていました。

私も自分が不安障害であることを受け入れて必死に戦うのをやめたのが転機となり次第に回復に向かっていきました。

不安障害の克服には様々な方法が提唱されていますが、多くの意見が一致している点において「不安と戦うのをやめる」という方法が有効であることは間違いないと思います。

不安で頭がいっぱいの状態の時に「不安と戦わないで!」と急にいわれても難しいと思いますが、まずはそのメカニズムを知ることが次第に受容につながっていくのではないかと思います。

繰り返しになりますが、例え不安やイライラといった不快な感情でも無視しようとしたり無理やり押さえつけようとすると逆に暴れてしまう可能性があります。

日常的にも多くの方が経験されていることだと思いますので、納得できる内容ではないでしょうか。

※おそらくいくつか紹介する克服法の中で「不安と戦うのをやめる」が一番実行が難しいと思いますのでこれからも記事で追加説明をしていく予定です。個人的には不安と戦うのをやめるという発想が難しいのであれば、「病気を無理に治そうとせずにうまく付き合っていく」「少し長い目でみてゆっくり症状を回復させていく」といった発想がお勧めです。

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